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腫れが引いた歯の根の違和感、受診を判断する目安
歯ぐきの白いできものから膿が出て腫れが引いても、歯の根の奥にある原因は残っていることが多く、強い痛みがなくても歯科医院での確認が必要です。神経を取った歯でも内部で細菌が増えると根尖病巣(こんせんびょうそう)となり、噛んだときに浮く感覚などが続く場合があります。この記事では、よく似た歯周病の腫れとの見分け方や画像検査の役割、歯を残すための治療方法と受診を急ぐサインを整理してお伝えします。
この記事の要点まとめ
- 膿が出て腫れが引いても、根の中にばい菌が残ることがあるため、痛みが少なくても歯科でみてもらう。
- 根尖病巣と歯周膿瘍は症状だけでは見分けにくく、お口の中の診察や画像の検査で原因を調べる。
- 治療は根の中をきれいにして消毒するのが基本で、状態によっては外科の処置も考える。腫れや熱があるときは早めに受診する。
歯の根に膿がたまる根尖病巣の症状と、腫れが引いても油断できない理由

神経を取って被せ物をした歯でも根の先に膿がたまるしくみ
過去に神経を取った歯でも、根管(歯の根の管)の奥に残った細菌や、古くなった被せ物のすき間から入り込んだ細菌によって、根の先で再び炎症が起こることがあります。深いむし歯や歯の神経の壊死(えし:組織が死んでしまうこと)が出発点となり、根の先端の骨の中に膿がたまる状態を根尖病巣(根尖性歯周炎・根尖病変)と呼びます。すでに神経がない歯は鋭い痛みを感じにくいため、気づかないうちに進行しているケースも珍しくありません。
噛むと浮く感じ・白いできもの・ぐらつきなど症状の出方には個人差がある
根尖病巣の代表的なサインは、噛んだときの鈍い違和感や歯が浮くような感覚、歯ぐきの腫れ、歯のぐらつきなどです。人によっては、固さや噛み切りやすさを意識して食べ物を選んでしまう、片側の歯ばかりで噛むようになるといった日常の困りごとから気づくこともあります。
一方で、根尖性歯周炎は、はっきりした症状がないまま長く続くことがよくあります 1。白いできもの(フィステル:膿の出口)ができる順序や症状の強さにも個人差があります。痛くないことだけを理由に、悪くなっていないと決めることはできません。
よくある誤解:膿が出て腫れが引いたら治った、とは限らない
歯ぐきにできた白いできものが破れて膿や血が出ると、そのあと腫れがスッと引くことがあります。これは骨の内側にたまっていた膿が外へ出て圧力が下がり、一時的に症状が落ち着いた状態です。膿の通り道ができただけで歯の根の奥にある細菌感染そのものは残っていることが多いため、疲れや体調の変化をきっかけに再び腫れを繰り返すことが多く、できものが消えたことを回復と考えるのは早計です。
様子見を続けると起こりうること:骨の吸収や歯根嚢胞、周囲への広がり
痛みが軽いからとそのままにしていると、炎症によって歯を支える周囲の骨が少しずつ溶ける骨吸収が進んだり、液体がたまった袋状の病変である歯根嚢胞(しこんのうほう)が大きくなったりすることがあります。上の奥歯の根の先の炎症が、鼻とつながる骨の中の空洞(上顎洞)まで広がることもあります。
まれに、あごの骨の中まで炎症が広がる骨髄炎など、広いところへ影響がおよぶおそれもあります。骨が溶けるところが広がるほど、自分の歯を残せる道がせまくなってしまいます。そのため、違和感のうちに今の状態を知っておくことが大切です。
ポイント
白いできものから膿が出て腫れが引いても、根の奥の細菌感染は残っている可能性があります。強い痛みがなくても骨の吸収が進むことがあるため、早めの確認が歯を守ることにつながります。
根尖病巣か歯周膿瘍かは症状だけでは見分けにくい|検査で確かめる内容と急ぐサイン
根尖病巣と歯周膿瘍の違い:膿がどこから来ているかがポイント
歯ぐきから膿が出る病気には、歯の根の先から起こる根尖病巣のほか、歯周病によって歯ぐきが腫れる歯周膿瘍(ししゅうのうよう)があります。どちらも似た見た目をしていますが、感染の出どころが異なります。
| 項目 | 根尖病巣(根の先の炎症) | 歯周膿瘍(歯ぐきの炎症) |
|---|---|---|
| 膿の出どころ | 歯の内部(根管)から根の先端 | 歯と歯ぐきのすき間(歯周ポケット) |
| 主なきっかけ | 深いむし歯、過去の神経の治療後の再感染 | 歯周病の進行、歯石や汚れの蓄積 |
| よくある症状 | 噛むと歯が浮く感覚、根の近くの白いできもの | 歯ぐき全体の赤みや腫れ、出血、歯の揺れ |
実際の診察では、これら両方が重なっている場合や、歯の根が割れる歯根破折(しこんはせつ)が隠れている場合もあるため、外から見える症状だけで見分けるのは困難です。
レントゲンで分かることと、CTで立体的に確かめること
原因を見極めるには、お口の中を診るだけでなく、レントゲンや歯科用CTなどの画像の検査が欠かせません。ふつうのレントゲンでは、根の先の骨が溶けたところが黒い影として写ります。ただ、炎症がごく初めの歯根膜炎のころや、骨や歯の根が重なっているところは、平らな画像だけでは見分けにくいことがあります。
そこでデジタルCTの立体画像を使うと、ふつうのレントゲンではわかりにくい歯根の数や向き、神経の位置、病巣の広がりまで立体的に確かめられます。そのうえで、歯を軽くたたく検査や、歯と歯ぐきのすき間の深さを測る検査と合わせて、原因をしぼりこみます。
顔の腫れ・発熱・飲み込みにくさがあれば早めに受診を
慢性的に経過することが多い根尖病巣ですが、急に強い炎症へ変わることがあります。次のような症状がある場合は、仕事の締め日などで休みにくい時期であっても先延ばしにせず、速やかに受診してください。
- 頬や顎の下まで目に見えて腫れが広がっている
- 発熱や全身のだるさを伴っている
- 口が開きにくい、または唾や食事が飲み込みにくい
- 何もしなくてもズキズキと脈打つような強い痛みが続く
夜間や休日にこれらの症状が急に強まった場合は、救急対応を行っている医療機関への相談も検討してください。
受診までの過ごし方:できものを押さない・反対側で噛む
受診日までの間は、歯ぐきの白いできものを指や爪で押したり潰したりしないよう注意してください。傷口から新たな細菌が入ると腫れが強まることがあります。食事の際は違和感がある歯で硬いものを噛むのを避けて反対側を使い、歯みがきは毛先の柔らかいブラシで優しく汚れを落とす程度にとどめます。手元の市販の痛み止めを使う場合は用法・用量を守り、薬で一時的に痛みが引いても原因は解消していないため、予定通り受診しましょう。
根尖病巣の治療の進め方と、自分の歯を残すために相談したいこと
根管治療・再根管治療で根の中の感染源を取り除く流れ
根尖病巣の治療の中心は、かぶせ物や土台を外して、根の管の中のばい菌やよごれを取りのぞく根管治療です(神経を取ったことがある歯では、やり直しの再根管治療になります)。根管治療にほかの処置を足すと治りがよくなる、とすすめられるだけの裏づけは、まだ十分ではありません 2。そのため、器具を使ったていねいなそうじと消毒、そしてばい菌がふたたび入らないようにする基本の処置が大切になります。
精密根管治療では、歯にゴムのシートをかけるラバーダムで唾液や細菌が入るのを防ぎ、マイクロスコープで患部を明るく照らして拡大することがあります。曲がった根管にはニッケルチタンファイルを使って内部を清掃し、仕上げに殺菌作用のあるMTAセメントなどで根管をふさぐことがあります。なお、治療中に根管から膿が出ないこともありますが、炎症の状態による個人差であり、膿が出ないこと自体が悪化を意味するわけではありません。
治りにくいときの歯根端切除術・再植と、抜歯を考える状況
根管治療を続けても治癒が見られない場合には、外科処置が検討されます。代表的なのは、歯ぐき側から根の先端と周囲の病変を直接取り除く歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)や、一度歯を抜いて処置したのちに元の場所へ戻す再植(さいしょく)です。(※神経が壊死した成熟歯に対する再生的な歯内療法も研究されていますが、さらなる検証が求められています 3。)
一方で、歯根破折が深い場合や骨の吸収が著しく進んでいる場合は、周囲の骨を守るために抜歯を考えることもあります。抜歯や神経の除去が必要と言われた歯、根の中で折れた器具がある歯でも、状態によっては残せる可能性を検討できるため、治療の前に相談してみることが大切です。
通院回数や期間が変わる要因と、治ったかどうかの確かめ方
通院回数や期間は、歯根の数や曲がり具合、病巣の大きさ、再治療かどうかによって変わります。根管の清掃・消毒を終えたあとには、被せ物を作って付けるための通院も必要になります。歯は治療を繰り返すほど脆くなり抜歯に近づくため、1回あたり90分ほどの治療時間を確保し、少ない回数で再治療にならないよう進める体制をとる医療機関もあります。
また、根管治療そのものの精度に加え、治療後に装着する詰め物・被せ物の適合精度も再発を防ぐ要素です。治療後は少なくとも1年ほど、必要に応じてそれ以上経過を追い、レントゲン検査などで根の先の黒い影が縮小しているかを確かめます。
なお、根管治療は公的医療保険で受けられます。マイクロスコープやMTAセメントなどを使う精密根管治療や、セラミックなどの被せ物は、自由診療(公的医療保険が使えない治療)となる場合があります。一般的な費用のめやすは、精密根管治療で1本あたり5万〜20万円ほど、自由診療の被せ物で5万〜18万円ほどです。
記載した金額は一般的なめやすで、当院の費用ではありません。実際の費用は医療機関や歯の場所・状態によって変わるため、各院にお問い合わせください。一般的には、費用は診察で歯の状態を確かめたうえで案内されます。
また、治療そのものに体が反応して、治療後に痛みや腫れが出ることがあります 4。ほかにも、根管治療や外科処置には歯根破折や再感染などのリスクを伴うことがあります。
東金市求名の当院へ相談するときに伝えてほしい症状と治療歴
治療済みの歯の違和感をご相談いただく際は、次のようなことを伝えていただくと診断の手がかりになります。白いできものに気づいた時期や膿が出た経過、いつ頃どの歯の神経を取ったか、過去に「根の先に影がある」と言われた経験などです。お仕事やお子様の送迎などでお忙しい方も、気になることをお聞かせください。あなたの声を治療に活かします。
よくある質問
Q. 根管治療で膿が出ないのはなぜですか?
A. 根の先の炎症が慢性化している場合や、膿の量が少ない場合、すでに歯ぐきの出口(フィステル)から外へ排出されたあとなどは、根管を開けても膿が出てこないことがあります。膿が出ないこと自体が悪いわけではなく、根管内の細菌や感染した組織を器具と洗浄液で丁寧に取り除くことで治療を進めていきます 2。
Q. 歯根膜炎はレントゲンでわかりますか?
A. 炎症が始まったばかりの急性の歯根膜炎では、まだ周囲の骨が溶けていないため、通常のレントゲン画像にはっきりとした黒い影が写らないことがあります。その場合は、噛んだときの痛みや歯を軽くたたいたときの反応、必要に応じた歯科用CTによる立体的な画像確認などを組み合わせて総合的に判断します。
Q. 歯ぐきの膿や根尖性歯周炎はどうやって治しますか?
A. 歯の根の奥にいる細菌が原因のため、自然に治るのを待ったり市販の薬にたよったりするだけでは、もとから治すことはできません。被せ物を外して根の中をきれいにし、消毒する根管治療(再根管治療)を行うのが基本で 2、それでも治りにくいときは歯根端切除術などの外科の処置を考えます。
参考文献
1. Tibúrcio-Machado CS, Michelon C, Zanatta FB et al. The global prevalence of apical periodontitis: a systematic review and meta-analysis. International endodontic journal (2021). PMID: 33378579 / DOI: 10.1111/iej.13467
2. Meire MA, Bronzato JD, Bomfim RA et al. Effectiveness of adjunct therapy for the treatment of apical periodontitis: A systematic review and meta-analysis. International endodontic journal (2023). PMID: 36156804 / DOI: 10.1111/iej.13838
3. Glynis A, Foschi F, Kefalou I et al. Regenerative Endodontic Procedures for the Treatment of Necrotic Mature Teeth with Apical Periodontitis: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Controlled Trials. Journal of endodontics (2021). PMID: 33811981 / DOI: 10.1016/j.joen.2021.03.015
4. 保存治療科 | 公立大学法人 九州歯科大学附属病院. https://www.kyu-dent.ac.jp/hospital/specialty/save_treatment/
日本大学松戸歯学部 卒業
2014年
医療法人 尚歯会 いさはい歯科医院 勤務
2015年
ぐみょう今井歯科医院 勤務
2019年
ぐみょう今井歯科医院 院長就任
日本臨床歯科学会
日本口腔インプラント学会
インビザライン 認定医
日本歯周病学会
厚生労働省認可歯科医師卒後臨床研修指導医
日本顎咬合学会 認定医
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